2010年 12月 04日
蟹に酔うて候。 |
人を黙らすに、暴力はいらない。哲学者の言葉ではない。ただの食いしん坊の戯言。蟹を食べる時は、誰しも寡黙になる、という定説。あんや否、話したくなる蟹。正しくは、蟹の調理法がある。「酔蟹」。こいつをいただく時、黙せず語りたくなる。こんな旨いもんをいただいて寡黙に、だな~んて、ちゃんちゃら可笑しい…とばかり饒舌になる。
秋口になると、杭州、香港の街角に、「大閘蟹」と大書きされた看板の下におびただしい数の蟹が並べられる。お菓子屋さんも煙草屋さんも、果物屋さんまで、この時期は即席蟹屋に変身だ。日本では「上海蟹」と呼ばれているこの蟹は、夏の名物「黄油蟹」と違って淡水の蟹だ。多くは蒸していただくが、これだと蟹の質だけで、料理、調理の技の差も大きくは感じられないだろう。そこでこの蟹の旨さそっくりしゃぶりつくす。その方法が、酒に漬け込む。故か「酔蟹」。これは彼の地でも、そう記す。「蒸し」より、壷中は、こちらを好む。少しこの蟹の話をしてみましょう。
「九雌十雄」。
彼の地では「大閘蟹」(ダージャーシエ、上海語 ドゥザッハ)と言う。食べ頃は、9月が産卵期前の雌、10月からは、ミソたっぷりの雄がよろしく、「九雌十雄」なる熟語があります。
日本では、「藻屑蟹=モクズガニ」。味も似ていて、蒸すよりも、茹でて食べているところが多い。淡水の蟹は生食はしない。蒸す時も、腹側を上にして蒸す、らしい。腹を下にしたり、茹でると腹の隙間(?)から旨味が溶け出すんだそうな。ちなみに、腹の中央部の輪郭線が尖って三角形なのが雄で、雌は丸みをおびている。
前項で記した調理の技。それは漬け込む汁のレシピ。料理人や店、家々などでやり方がある。必須は紹興酒。これに香辛料、ハーブ、砂糖なんぞで「秘伝」とやらをこさへ、漬け込む。その時間は、一週間から十日前後という人もあるし、もっと長くという人もいる。
半年物なる珍をいただいたことがあるが、文字通り、「溶ける」でありました。その際、上等の紹興酒を相手にすることをお忘れなく。体を冷やす蟹には、お酢に添えられた生姜、紹興酒も温の役割を果たす。「医食同源」のシンプルを是非、召し上がれ。この蟹は浙江料理店(上海料理はこの一部の料理)でいただくのが一番。その善し悪しは、浙江料理の名物「東坡肉(トンポーロウ)」で推し量ることができる。これが旨ければ、晩秋の「酔蟹」もいける、はずだ。
『杭州酒家』(Hong Zhou Restaurant)
住所:1/F., Chinachem Johnston Plaza, 178-186 Johnston Rd.,
Wanchai 営業時間:11:30~14:30(LO)、17:30~22:30(LO) 旧正月休
TEL:852-2591-1898 *写真は、TOP左「酔蟹」、右「(蒸したての)大閘蟹」、
続き部分左「大閘蟹の蟹ミソを使った麺」、 右「蒸した大閘蟹のミソ」。
by COTYUU
| 2010-12-04 09:16
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